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旅行記録ブログ

いろんな国の鉄道乗車記録 その4(コーカサス地方 後編)

乗車記録ブログその4です。前回と引き続きコーカサス地方を移動します。

この記事(後編)では青色部分の移動について記します。「鉄道乗車記録」と銘打っておきながらアレなのですが、

陸部分の破線はマルシュ(小型バス)

海部分の破線はフェリー

を利用しました。その為今回の記事は鉄道成分薄めの番外編のような感じです。ご了承ください。

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移動経路。この記事では青色のルートを扱います

 

エレバントビリシ(小型バス)

移動区間エレバンアルメニア首都 )〜トビリシグルジア首都)】

エレバンから再びトビリシへ戻ります。往路と同じ寝台列車に乗って戻ろうと思っていたのですが列車は週に数本しか運行しておらず、スケジュールの都合で乗合小型バス「マルシュルートカ・通称マルシュ」を利用しました。グルジアアルメニアでよく見かける乗合バスです。大抵の場合やや大きめのワゴン車で、運転席の窓のところに行先が書かれたボードが立てかけてあります。出発時刻が決まっているものもあれば、人が集まったら出発〜という緩いスタイルのものまで様々。そして大抵運転が荒くて速い!

 

エレバン駅前からトビリシ行きのマルシュがたくさん出ていたのでそちらを利用しました。発車は朝10時くらいだったと思います。事前予約は必要ないので直接駅へ向かい、運転手に声を掛けて料金を支払って乗車します。先人の旅人からエレバン駅〜トビリシのマルシュは7,500ドラム(≒1,600円)と聞いていたのですが、まけてくれたのか何なのか7,000ドラムで大丈夫でした。うっかりしていて残りの手持ちが丁度7,000ドラムだったので助かりました。

ただ、このマルシュがなかなか厄介そうなビジュアルでした。スモークフィルムが貼られたガラスから車の中の様子はわからず、車体にはなんとも言えない趣のステッカーが大量に貼ってあります。駅前には数台のトビリシ行きマルシュが停車していたのですが丁度良い時間に出発してくれるはこの怪しげマルシュのみ。背に腹はかえられぬので乗り込みます。

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今回お世話になったイカしたボディのマルシュ

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サイドには拳銃と銃痕のシールも

 

 

マルシュには近距離移動タイプも多数あり、そちらはこれまで何度か乗った経験がありましたが基本飛ばします。コーカサス地域は全体的に山道が多いとされていますが気にせずビュンビュン走ります。

今回乗ったマルシュも例外ではなく、爆速運転でした。このまま離陸するのではという速度感とあの車体だけでも不安を煽られるのに、車内にはラブ&ピースな落書きが大量に施さています。そして音楽を爆音でガンガン鳴らすパーティースタイル。これは…!!と思いましたが、乗ってしまったものは仕方ありません。あとは無事にトビリシに着くことを神に祈るのみです。

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ラブ&ピースな車内。窓のピストルの存在感もすごい

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邪悪なバボちゃん

 

私以外の乗客は中国人の女の子二人組のみでした。寝台列車で一緒になった子も中国人でした。アルメニアは中国女子に人気の旅行先なのかもしれません。

 

 

 

走り出したマルシュは山道だろうが雪がチラつこうが飛ばします。加えてアルメニアの道路はあまり状態がよろしくなく、道の真ん中に大きな穴が開いていたりします。ですが道に穴があろうともちろん減速なし、フル加速のまま穴を器用に避けて走行します。そしてなんと峠のトンネル内では反対車線を使って前方の車を追い越すという超絶技巧も披露してくださいました。もうやめて!!!

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飛ばすぜ!

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動物も慌てて逃げる

 


そんな運転に震えていたら空に急に光が差しました。神々しい光です。そして何故かそのタイミングでそれまで車内で流れていたアゲアゲなパーティーソングが爆音のYou Raise Me Upのサビに切り替わりました。

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パアァァァと差した光

爆速カーに乗って天国へ向かっているような気分になってきました。いかついドクロが貼られた車じゃ天国側に入国拒否されそうですが。外の眩しい光から車内に目を戻せば邪悪なバボちゃんとピストルが目に入ります。なんだか笑えてきました。全部幻覚?

 

そんな運転だからか、その後パトカーに停められました。然もありなんです。

なんやかんやでイミグレーションまで辿り着きました。アッサリした出入国審査を終えて帰ってきたパスポートを見ると、カワイイと思っていたグルジア出国時の列車スタンプの上にアルメニアの出国スタンプが重ねられていました。ガーン。

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途中にあったアルメニア国旗に塗られた巨岩

 

国境を越えてグルジア側に入ると、明らかに道路状況がよくなりました。アルメニアのような回避しなければならない道の中央にデンとある大穴がありません。そして事故もなく無事に夕方にはトビリシに到着することができました。寝台列車と変わらない金額でアルメニアグルジア間を早く移動できるのでマルシュを利用する人が多いのは理解できましたが、あのスリルと天秤に掛けてどちらを取るかという感じです。

 

 

 

 

グルジア(国内移動)

移動区間トビリシ〜バトゥミ

トビリシで数日過ごしてから、沿岸部の街「バトゥミ」まで一気に移動しました。当初満席で列車のチケットが取れず、仕方なくこの区間もマルシュで移動しようとしていたのですが当日ダメ元で再度切符窓口へ行ったらキャンセルが出ていたようで切符を買うことができました。やったね!お値段19ラリ(≒870円)

ここまで古い車輌や謎マルシュばかり紹介してきましたが、今回はピカピカの新型車輌での快適な鉄道旅となりました。

 

 

ホームに列車が入ってきました。ピカピカの二階建て車輌です!車体にはグルジアの国旗が大きくペイントされています。

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ピカピカの車輌!

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国旗ドーン!

 

さっそく乗り込むと、車内も期待通りのピカピカ車輌!なんだか急に現代に来た感じです。それにしても寝台列車たちとはえらい違いです。

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ピカピカの車内

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飛行機のような柄の座席

 

席はおそらく全席指定で、私の席は4人掛けのボックス型になっていました。しばらくしたら10代半ばくらいの女の子3人組がやって来て、お友達同士のお出かけに割り込む感じになってしまいなんだか申し訳ない。この子たちとも軽くお菓子の交換会などをしました。海外で鉄道を利用すると人との触れ合いが発生しがちでありがたいです。

そして驚くなかれ、この列車なんとWi-Fiつきです。とはいえ繋がるのはトビリシ駅周辺だけだろうな〜と思っていたのですが、山岳部の「ここはさすがに使えないっしょ〜」という感じの場所でも問題なく使えました。すごい!

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快適な車内でみなさんリラックス

 

発車してすぐに、鉄道の墓場ゾーンを通りました。アゼルバイジャンからグルジア入国時にも見かけた光景ですが、方向が違うのでまた別の墓場ゾーンということです。グルジアの鉄道は車輌放置しがちなのでしょうか。

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野晒しの車輌たち①

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野晒しの車輌たち②

 

列車はすぐに街を抜けて、川沿いをぐんぐん走り、広い草原(今は枯れてるけど)を走り…。

少ない数ですがこれまで乗った各地の鉄道はだいたいそんな感じで最初は街中を走ってしばらくすると自然の中に入っていきます。こうしてみていると、どこまで走ってもひたすら線路沿いに建物があり人がいる中国は例外的だよなあと感じます。チベットとかへ行けば違うのかもしれませんが。

 

以下、車窓コレクションです。

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高さの揃った山々

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途中見えた大きい水門

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煙突から煙が出ている家が多い。そして右奥にカラフルな貨物列車が走っている


 

写真は撮れなかったのですが、途中の山の中にポツンとある駅の駅舎の横によく肥えた鶏が数羽いるのが見えました。駅で鳥を飼ってるのでしょうか。そしてベトナムの鉄道でも思いましたが、山中にぽつんとあるような信号場で働いている人が良い表情をしているとなんだかホッとします。

 

以下、駅コレクションです。

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TSIPA駅。よく見ると脆そうなバルコニーに大人が2人も乗っていて少し怖い。

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KHARAGAULI駅。ピンクの可愛い駅舎。

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KOBULETI駅。プールっぽい。

 

なんだか可愛らしい駅が多いです。車窓から見える家々の構造も凝ったアーチが連なっていたり、天井からレースのような繊細な造形物が取り付けられていたりと見ていて飽きないです。

 

 

海沿いに出ました。遠くにバトゥミの街が見えます。トビリシ方面は晴れていましたが、バトゥミに近づくにつれて雨模様になってきました。

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遠くにバトゥミのビル群が

 

定刻より20分ほど遅れて、13:20にバトゥミ中央駅に到着です。

駅はバトゥミの市街地からは4キロ程離れた郊外にあるため、ホームに降りるとタクシーの客引きの嵐です。試しに1人に市街地までの値段を聞くと10ラリとのこと。高いのか安いのか分からず外に出て、道端で声をかけてきた適当なタクシーに乗ったところ3ラリでした。10ラリは吹っかけていたようですが、このタクシーの運転手は下心を見せてくるタイプの運転手だったので疲れました。女性一人旅とタクシーはどうしても相性が良くありません。この旅行ではタクシーにまつわる色んな事件があったので、機会があればそれもブログに書けたらな〜と思います。

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バトゥミ中央駅

 

 

 

 

 

グルジアウクライナ(フェリー)

移動区間【バトゥミ(グルジア)〜オデッサウクライナ

黒海を横断するフェリーでグルジアからウクライナへ移動した際の記録です。バトゥミに来たのもそのためでした。利用したのはUKR Ferryというウクライナの会社がバトゥミ(グルジア)⇄オデッサウクライナ)間で運行している定期船です。所要時間は2,3日〜とされています。曖昧なのは天候次第で大幅な遅延も有り得るからです。

元々コーカサスのあとはヨーロッパ方面へ行く予定ではありましたが、当初はこのフェリーを利用する予定はありませんでした。しかしグルジアで出会った旅人数名が口を揃えて「あのフェリーはいいぞ!」「天気がいいとイルカが見れる!」「ご飯がすごくおいしい!」と絶賛。ある人は「あの船は面白い。決められた同じ座席、決められた同じ時間、決められた同じメンバーで毎回食事をする。極めてソビエト」とも言っていました。そうまで言われるとどんなものか気になってしまい、私も乗船してみることにしました。

 

ただ、黒海横断フェリー乗船までの道のりは過酷でした。

まずホームページに記載されている運行スケジュールがコロコロコロコロ変わります。船なので天候の影響が大きいので仕方ないのですが、本当にコロコロ変わります。乗りたかった船の出発日が数日後に変わったと思えば、今度は逆に少し早まったり。とにかくこまめに運行スケジュールをチェックする必要があります。

 

そして予約も大変でした。知り合ったフェリー乗船経験者はウクライナ側から乗った人ばかりでグルジア発の予約方法が分からなかったため、まずサイトに記載されたフェリーの予約管理を行っている会社のメールアドレスに「この日の便を予約したい」と連絡。しばらくすると返信があり、必要書類を送ったりして順調にことが進んでいると思っているとまた運行スケジュールが変更されていたりします。そのスケジュールを再度問い合わせたりしてダラダラとメールのラリーが続きます。そのやりとりもスムーズに行けばいいのですが、グルジアの国民性なのか(はたまた日本人の私がサービスを求めすぎなのか)返信は基本ラフでルーズです。催促しないと全然連絡が来ないこともざらです。「送ったメール見てくれましたか?返信ください!」と根気強く行く必要があります。

 

紆余曲折あって、直接予約管理事務所トビリシ支店のオフィスへ向かうことになりました。 最初にメールをしてから既に2週間ほど経過しています。

事前に聞いていた住所と同じ番地の建物がなぜかたくさんあって迷ったいましたがなんとか辿り着きました。オフィスはやや古い雑居ビルの5階にありました。中に入ると正面の椅子にずっとメールでやりとりしていたニノという女性が座っていて、「○○(名前)だね?」と言われました。そうです○○です。やっと会えましたね。ちなみに「ニノ」という名前は、グルジア女性で圧倒的に多い名前らしいです。グルジアに初めてキリスト教を伝えた聖ニノに由来します。ニノさん、メールの返信はかなりラフでしたが会ってみると意外にも生真面目そうな雰囲気の方でした。

さくさくっと書類を作ってくれて「これを持ってこの近くにある銀行で乗船料を振り込んで、そのレシートを持ってきて」とのこと。船代はUSドル表記ですがその日のグルジア・ラリのレートに換算して支払います。

書類を見ると金額が事前に聞いていた110USDから125USDに変わっていることに気が付きました。それを尋ねると、

「これは2人部屋の料金。でも他に利用者がいないから1人で部屋を使える。もともと希望していた4人部屋だと他の人と相部屋になるけど、そっちのがよかった?」

とのことでした。元々は寝台列車のような4ベッドタイプの部屋を希望していましたが、15ドルの違いで1人部屋なら絶対にそっちの方が良いです。ありがたく125ドル支払わせてもらいます。

 

銀行は意外と混んでいて時間はかかりましたが問題なく支払いできました。海外の銀行初体験だったのですが、日本と同じく整理番号が書かれた紙が発券されて呼ばれる形式でした。

レシートを持って再度オフィスの入っているビルへ戻ります。エレベーターに乗り込みオフィスのある5階を押しますが、ボタンが光らない。あれ?と思っているとエレベーター内の照明が落ちた。暗いエレベーターに閉じ込められて軽くパニックです。こういう時はとりあえず一番近い階のボタンを押せとどこかで聞いた記憶があったので2階のボタンを押したところ、暗いまま動き出した!のですが、どうも動いてる時間が長い……と思ったら5階で開きました。ドアが開いた先にいた中年男性がめちゃくちゃ驚いた顔をしていました。偶然この人がエレベーターを呼んでくれたおかげで外に出れたということでしょう。助かりました。それにしてもこのエレベーターはどういう仕組みだったんだろう……。

ニノは不在でしたが、先ほど「これから休憩だから帰ってきて私がいなかったらレシートは机の上においといて」と言われていたのでそのようにして、帰りはもちろん階段を使いました。

これで予約は成立しましたが、乗船前日にバトゥミにあるオフィスでチケットを受け取る必要があります。

 

↑ここまでがトビリシでの出来事です。

↓ここからがバトゥミでの話です。

 

フェリー出発地であるバトゥミに列車で到着してすぐに、予約していた明日発のフェリーチケットを引き換えに予約管理事務所バトゥミ支店へ行きました。ちなみに予約管理事務所は港ではなく街中にあります。あらかじめ今日チケットを取りにいく旨をメールしてたので、中に入ると「○○(名前)だね?」と言われた。そうです○○です。

無事チケットを受け取り、乗船する港の場所と乗船時刻を確認。いかんせん運行スケジュール自体がコロコロ変わるのでホームページに載っている乗船開始時刻も暫定的なものです。「乗船時刻については今夜22時に電話をくれ。そしたら教える」とのことで電話番号をもらいました。一応現在ホームページには翌朝6時に出航と書いてありますが、雨も降っているしまたずれ込みそうです。 

 

その後ホテルにチェックインしてからフェリーに持ち込むおやつたちを買いにスーパーへ。

現金が45ラリ(≒2,000円)残っていたので結構買えるぜ〜と調子に乗って、お気に入り板チョコ10枚(!!!)と水、ヨーグルト、サラミなどなど心の赴くままに購入したら計42.5ラリになりました。ギリギリ!

買い物を終えて外に出ると、今日が国際女性デーだからか街中に花売りがたくさん居ました。ほとんどが黄色いアヤメのような花を売っています。ちょうど先ほどイランで知り合った知人から「happy women’s day!」のメッセージを受け取って「馴染みのない記念日だけど、自分(女性)のための日だと思うと悪い気はしないぜ」と調子に乗っていたこともあり自分用に1つブーケを買ってみました。0.5ラリ。船に乗ったら部屋に飾ろう。

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どハマりしたオレンジチョコ。ビール(右のボトル)とも合う!

 

 

その後、宿に戻ってからは爆睡。22時ころに乗船時間を問い合わせるために起きました。私のSIMは期限切れだったのでフロントの人につたない英語で事情を説明して電話を貸してくれ〜と言うと、俺の携帯ではだめだからマイフレンドに頼んでみるとのこと。

しばらくするとウクライナに滞在してたことがあるというマイフレンドが現れて電話を貸してくたのですが、なかなか通じない。何度も何度もトライしていたらようやく通じて、無事に乗船時間を聞けました。「7時……いや8時でいいな、8時に港にこい」とのことでした。乗船時間は指定されましたが、出航時間は教えてもらえませんでした。そのことを宿のスタッフに告げると「それなら出航は10時か11時頃だろうね…w」と笑っていました。

マイフレンドは「ウクライナへ行くなら船よりも飛行機の方が絶対にいい」と言っていて、本当にその通りですねと思いました。スタッフの方とマイフレンドさん、とにかくありがとうございました。

 

 

 

■乗船1日目

翌朝6時半に起きて、荷物をまとめて宿を出ました。朝早いので宿スタッフさんを起こしたくなかったけど、結果起こしてしまい見送ってもらった。大変お世話になりました。

7時を過ぎてもバトゥミの街はまだ薄暗いし人も歩いていないけど、怖い雰囲気ではありませんでした。夜は雨足が強まってたけど、出る頃には小雨になっていたので良かった……と思ったけど、港に近づくにつれて本降りになってきました。ちなみに市街地から港は若干距離があるので、雨の中で海沿いを黙々歩きます。買い込んだ食料等を詰めた紙袋が雨に濡れて破けないか心配です。

 

ようやっとフェリーターミナルに着くと、改札のようなゲートのある小さな建物でパスポートとチケットをチェックされてます。「このままフェリーのほうへ行くように」と言われたので歩き出すも、周囲はコンテナだらけで雑然としており、乗船口らしい場所は見当たりません。ウロウロしてたらコンテナのトラック運転手たちが「あっち!あっち!」と教えてくれました。わざわざトラックから降りて「あっちにパスポートコントロールがある」と教えてくれた人もいて、礼を言ってそれらしき小屋へ行ってみるも、無人

さすがにここではないだろう…とコンテナの搬入口へ向かってみると、近くにいた係員にパスポートをチェックされて「ここを60m直進して右手のリフトにのって、7階へ!」と言われました。この搬入口から乗るようです。コンテナと壁の間のわずかな隙間を縫って歩きます。

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左がコンテナ、右が壁。その隙間を歩く

狭い隙間を歩いているとなんとなく不法侵入感があります。本当にこのまま乗っていいんだろうか…と思いつつ貨物コンテナで塞がれた道の端を進みます。「貨物輸送こそがこの船のメイン業務で、旅客輸送などお情けでしかないのだ」とでも言われているような気分です。

 

ヨロヨロ歩いていると、ついに雨に濡れた紙袋が破けました。外を歩いてるうちからやばいかなやばいかなと思っていたけれど、ついにここにきて限界がきました。それも運悪く、廃油なのか雨水なのかよくわからない水たまりの場所で…。よりによってです。散々だぜ!という気持ちで荷物を拾い集めます。拾い集めた荷物を抱えてえっちらおっちら歩いて指示通りリフトに乗り、ようやく船の中につきました。船の中は古い建物の匂いがしました。

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エレベーター。古い!

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7階を押す

ウクライナの会社が運行するフェリーなので、船内にグルジア語はありません。あるのはウクライナ語と僅かばかりの英語です。

 

ちなみに乗船時も下船時もいっぱいいっぱいすぎて、肝心なフェリー外観の写真を撮るのを忘れています。この先も港に停泊するフェリーの写真はないです。あしからず。

 

 

矢印に従って歩くとフロントに出たので、チケットとパスポートを提示してチェックイン。フロントの紳士が「JAPAN?」と聞くのでyesと答えたら「こんにちは!」と言ってくれました。疲れていましたがこれにはニッコリ。

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船のロビー。写っていないが左側にフロントがある

 

部屋はニノが言っていた通り、2人部屋を1人で使用です!やった〜。

2段ベッド、机、シャワーとトイレが備え付けです!シャワー浴び放題はかなり嬉しい!

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2人部屋を1人で使う

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シャワーとトイレもあります

 

早速お湯たっぷりのシャワーを浴びて、昨日買った花を窓際に飾って、ワインとおつまみを広げます。朝から飲むなよって話なのですが、船で優雅にワインを楽しんだ先人たちの話を聞いて宴inフェリーをずっと楽しみにしていたんです。ちなみにワインはトビリシの市場で量り売りのものを調達していました。

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窓際に花を飾った

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宴会セット。ペットボトルに入っているのは量り売りワイン

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ワインを買ったトビリシの市場の店にて。指定した量のワインをつめてくれます。

 

まだ出航していませんが、さっそく宴会開始♩と思ったら「朝食の時間です。ロビーの隣にあるレストランまで来るように」との放送が。まさか初日の朝ごはんから頂けるとは思っていませんでした。ちなみに乗船中の食事(朝昼晩)は全てチケット料金に含まれています。

さっそく食堂へ向かい、チケットに書かれた番号のテーブルに着席します。同じテーブルはウクライナ人のおじさまたちがメインでした。乗船中はずっとこのメンバーで食事をすることになります。おじさまたち、メッチャ話しかけてくるのですがウクライナ語で全然わかりません。

学生時代のことですが、第二外国語で履修したかった中国語と韓国語が人気すぎたために第三希望として「なんかかっこいいから」とノリで書いたロシア語を取るはめになってしまい泣きながら履修していました。ウクライナ語もロシア語と同じキリル文字だし、もしかしたら通じるかも?と思い記憶の彼方にあった「私は日本人です」「あなたはウクライナ在住ですか?」くらいの簡単なロシア語をかたことで喋ったら通じました。時を経てロシア語が意外なところで役に立ちました。

 

ご飯は既に配膳されており、スープのみ自分でよそう形式です。朝ごはんはソーセージとスクランブルエッグとポテトのポタージュのようなもの。このポタージュが意外と甘い味付けでした。

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朝ごはん

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紅茶やビスケットもありました

食後、おじさま達が余ったビスケットを「持っていって部屋で食べな!」と紙で包んでくれました。やさしいですね。

 

部屋に戻ってゴロゴロしてたら「パスポートコントロールの準備ができたのでレストランへ」という放送が入りました。先ほどまで朝食が並んでいたテーブルに審査官が着いて、そこにみんなが並んでいます。乗客は仕事で来てるらしきウクライナ人男性がメインで、その中に家族連れもチラホラという感じです。私も列に並び、はじめての船上での出国審査にドキドキしていたのですが「by car?」としか聞かれず、あっさりスタンプを押してもらいました。そしてここでパスポートは没収。恐らくウクライナ入国時のパスポートコントロールで返却されるのでしょう。

 

再び部屋に戻ってワインやおつまみをつまみながらゴロゴロしていたら、ようやく出航しました。10時45分くらいだったので、だいたい宿のスタッフさんが言った通りの時間でした。船の中で出国審査をするから出航まで時間がかかるのですね。

予定は6時バトゥミ発で2日後の20時にオデッサ着だったので、ここから遅延なく進んだ場合オデッサに着が真夜中になってしまいます。知らない街に真夜中到着は避けたいところなので、遅延してせめて朝方に着いてほしいものです。

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離れていくバトゥミの港

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楽しかったグルジアとお別れです



昼ごはんのアナウンスがあって食堂へ行ったら、スタッフさんに「sea sick?(船酔いした?)」と神妙な面持ちで心配されました。全然元気だったのですが持ち前の顔色の悪さを発揮してしまったようです。日本でもたまに電車で「具合悪いんですか?」と席を譲っていただくことがありました。それはそれとして、この船のスタッフさんは皆さん大変親切な方でした。

船酔いはしていませんでしたが確かに船はわりと揺れていたため、机で作業なんかしていると気分悪くなりそうだったので午後は寝て過ごしました。

 

 

ぐっすりと寝て、夜ご飯のアナウンスが鳴る頃に起きました。先ほどまでは男性のアナウンスだったのが女性に交代していました。ウクライナ語の後に英語のアナウンスが入るのですが、男性版ではアナウンスの最後が「Enjoy your meals!」だったのが「Please, don’t be late!!」に変わっており、「決められた同じ座席、決められた同じ時間、決められた同じメンバーで毎回食事をする。極めてソビエト」の言葉を思い出しました。遅れないように食堂の決められた席へ向かいます。

 

以下、黒海フェリーお食事コレクションです。毎回わりとガッツリでこってりなお食事でした。写真は省略していますが、毎食スープもつきます。

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メニューも掲示されいます。本格的!





食後、デッキに出れたので夜風を浴びてみました。夜の海って何も見えなくて怖いですね〜。

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夜のデッキ

部屋に戻ってシャワーを浴びて少し横になろうと思ったら、そのまま眠ってしまいました。

 

この旅行中、シャワーのない安宿に泊まることも多く毎日お風呂に入れていなかったので温かいシャワー浴び放題の個室は最高でした。毎日入浴できないことに関して、メンタル面では平気だったのですが身体が悲鳴をあげていたのです。不衛生にしていることが影響してか、首や背中が赤く爛れてかゆみが出ていました。掻かないようにしようと思っても寝てる間にぽりぽり掻いてしまい、腹や腕にもかゆみが出るように…。

 

 

■乗船2日目

目が覚めると、雲間からうっすら光が見えるようなぼんやりした空が広がっていました。それでも昨日のような曇天でないことが嬉しくてデッキに出てみました。

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デッキから見たぼんやりした朝の空

 

朝食を済ませて部屋で写真を整理したり日記を書いたりしていたら、外が晴れました。快晴ではないものの、やっと青い空が見えました。嬉しくなってデッキに出ると、めちゃくちゃ寒いけど日の光を浴びれて気持ちが良いです。海もなんだかキラキラしています。

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一瞬の晴れ間

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寒いけど気持ち良い


曇天時の海面を見て、黒海ってやっぱり黒いんだ…と思っていましたが、天気が良ければ青い。青いぞ!

しかしこの晴れ間は一瞬で、昼ごはんの頃にはもう曇りに戻っていました。ちなみにもともと黒海は雨が多い気候で、悪天候時に海面が黒くなるから「黒海」と呼ばれている説もあるそうです。

 

 

というわけで、午後も引き続きお部屋でのんびり過ごします。

肌のかゆみがいよいよ深刻になってきたため、蕁麻疹出た時のためにとっておいた飲み薬を飲んでみたりしたのですが、特に効果は出ず。楽しみにしていた赤ワインも飲むと血行が良くなって痒みが増すような気がしてあまり口をつけていませんでした。悩ましいです。

 

 

■乗船3日目

真夜中にオデッサに到着することを恐れていましたが、いい感じに遅延してくれたようです。朝起きてもまだ着いていませんでした。窓の外はモヤがかかっていて水平線が見えない状態でしたが、「〜〜〜チョルノモルスク(オデッサの港の名前)なんちゃら〜〜」とウクライナ語の放送があったのでそろそろ着くのかもしれません。英語のアナウンスも欲しいところです。

そういえば昨日、プー!プー!プー!プププー!とけたたましいサイレンが2度鳴ったあと、ウクライナ語だけでサイレンの説明と思しき放送がありました。不安になるので英語でも言ってほしい。

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朝の窓。遠くにオデッサが見えるような、見えないような

 

9時頃、オデッサの港周辺の景色が見えてきました。

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オデッサが見えた

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船旅もおしまい

 

そして私、ここにきて大変なことをやらかしていたことに気が付きます。ウクライナの通貨を1円も持っていないのです。

バトゥミの街には両替商がたくさん並んでいたので、ウクライナ側にも同じように両替商が並んでいるだろうから着いたら手持ちのUSドルから両替すればいいや。と考えていました。しかし、陸が見えてきた頃にフロントでオデッサの港周辺で両替できる場所を聞いたところ「大変不幸なことに両替できる場所は無いよ…」とのことでした。オデッサ中心部へ行くにはバスまたはタクシーということですが、両替できないことにはどうしようもありません。僅かばかりのグルジア・ラリとUSドルしか持ってないと伝えたら「ちょっと待って」とどこかへ行ってしまいました。

スーパーで板チョコ10枚買って浮かれている場合じゃなかった…。サラミやおやつを買うお金でウクライナのお金を作っておくべきでした。大反省です。

 

そうこうしている間にグルジア出国時と同じようにウクライナ入国のパスポートコントロールin食堂が行われました。入国審査は「ウクライナは初めて?」と聞かれたくらいで済みました。入国審査官のネイルが派手なピンクにキラキララメで、お堅い仕事だけど自由な感じがいいなあと思いました。「Welcome to Ukraina!」という言葉とともにパスポートを受け取ります。

 

入国審査を終えて食堂を出ようとしたら、先ほど声をかけたフロントの男性に呼び止められて、なんと港から街へのバス代として20フリヴニャ(ウクライナ通貨)を手渡されました。そんな……!!完全なる私の自業自得なのに思わぬ親切を受けて申し訳なさと有り難さでいっぱいになり、礼を言って外貨でその分お支払いしますと申し出たのですが「いいからいいから」と受け取ってもらえませんでした。こんなアホアホ乗客のために、なんて優しいんだ…。

港を出たら25番バスに乗ることと、ガソリンスタンドの近くというバスの停留所の場所を親切に教えていただいて「迷わないでね」と見送ってくださいました。

本当にありがとう……ありがとう…!!!!

 

 

下船は乗船と逆の手順で降りれば良いようで、同じようにコンテナの横を通って外に出ます。乗船時と同じようにコンテナ出入口にいたスタッフにパスポートを見せて、港の入り口まで移動するバスに乗車。大きな荷物はバスに持ち込まず、なぜか隣に停まっているフォークリフトに載せます。そしてこのバスがまあボロい。ガタガタ揺れるしカーテンもボロボロです。

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カーテンがボロボロのバス

バスは発車したかと思ったらすぐに止まって、ほんの数十メートルの移動でした。これくらいの距離なら歩かせればいいのに!と思いましたが、入国者の管理のために必要なのでしょうか。

バスを降りると、遅れて我々の荷物を乗せたフォークリフトもやってきました。よく見ると私の青いバックパックも居心地悪そうに揺られています。

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荷物を乗せてこちらに向かってくるフォークリフト

 

 

 

その先にある小屋のような小さな建物で手荷検査を受けます。

バトゥミ側の港では特に手荷物検査も無く、これじゃ密輸入し放題ではと思っていましたがここでしっかり検査されました。検査官の後ろに麻薬犬と思しき毛足の長いモップのような犬がいたのですが、何も無い床をクンクンしたりとどうも賢そうではありませんでした。

私の前にいた韓国人男性が大量に持っていた何かの箱を怪しまれて開けさせられていたので、10枚も同じ板チョコを持っている自分も怪しまれるのでは一抹の不安が過ぎりましたが、まったくもってスルーでした。

 

晴れて無事入国したのですが、港付近は思った以上に何もない場所でした。家も店もなく、コンテナを積んだ車が並ぶ寂しい道を歩きます。途中動物のにおいがすると思ったら羊の入ったコンテナがありました。道はぬかるんでいる箇所もあり、なんだか気持ちがどんよりします。

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コンテナの中の羊

 

歩いてるうちに上の方に大きな幹線道路が見えてきたので登ってみると歩道があり、ホッとしました。

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歩道に出た

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港から歩いてきた道を振り返る。港まで貨物用と思しき線路が続く

 

フロントの男性に教えてもらった通り、しばらく歩くとガソリンスタンドの近くにバス停が見えました。しかしバス停の待合室は老朽化してほぼ崩壊しており、時刻表も見当たりません。しかもバス停の目の前にはコンテナトラック数台が停車して視界を塞いでおり待合室にいてはバスが来ても気づけない状況です。どうしたものかと思っていたらちょうど25番バスがやってきました!おーい!乗りまーす!!と手を振るも、直前までコンテナの影になっていたせいか無情にも通り過ぎていきました。悲しい。

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緑の屋根の建物がバス停。目の前のトラックが視界を塞ぐ

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バス停の周りは何も無い

コンテナの影になる場所にいてはいつまでたっても乗れなそうなので、少々道路に出て次のバスを待っていたら10分程度で次の25番バスが来ました。大きく手を振ったら止まってくれました。バスは満員でしたが体をねじ込みます。

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大切な20フリヴニャでお支払い

バスに揺られて、無事にオデッサの市街地まで出ることができました。

悪天候と肌トラブルになんとなく悩まされた船旅でしたが、贅沢な個室と食事を満喫できたうえに優しい乗務員さんに助けてもらったりと思い出深いものとなりました。

 

 

鉄道乗車記録と銘打っているにも関わらず、フェリーの話が一番長くなってしまいました。次回でやっと鉄道乗車記録完結です。